心臓弁膜症
心臓弁膜症とは
心臓には4つ部屋(左心房・左心室・右心房・右心室)が存在しており、それぞれの部屋の間に、血液の逆流を防ぐ“弁”があります。その“弁”に何かしらの障害が起きることで、血液の流れが悪くなったり、逆流を起こしたりする状態を、“心臓弁膜症”と呼んでいます。
大きく分けて、石灰化などで弁が硬くなり血液の出が悪くなる“狭窄症”、弁の閉じ方が不完全で血液が逆流する“閉鎖不全症”、があります。
主な心臓弁膜症 の名称 |
主な原因 | |
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狭窄症 (弁の開き が悪い) |
大動脈弁狭窄症 | 加齢、動脈硬化、先天性 |
僧帽弁狭窄症 | リウマチ熱、加齢・硬化 | |
閉鎖不全症 (弁の閉じ が悪い) |
大動脈弁閉鎖不全症 | 加齢・変性、先天性、自己免疫疾患、結合織異常、感染症 |
僧帽弁閉鎖不全症 | 僧帽弁逸脱症、加齢・変性、感染症、二次性(心筋梗塞、心筋症、心房細動など) |
心臓弁膜症の検査
心臓超音波検査(心エコー検査)によって診断可能です。
心臓超音波検査は外来において数十分で検査可能で、痛みは伴わず、放射線被曝もないため繰り返し検査することが可能です。
心臓弁膜症の診断には非常に有用な検査となります。
心臓弁膜症の症状
心臓弁膜症にも病状の程度があり、軽症のものですと無症状の方も少なくありません。健康診断などの聴診で、たまたま心臓の雑音を指摘され見つかる方もよくいらっしゃいます。
しかし、下記のような症状が出てきた場合には、精密検査や治療が必要となる場合があります。
また無症状の方でも徐々に進行が認められる場合もあり、定期的な診察と心エコー検査等での経過観察が必要となります。
① 心不全症状
弁膜症により心臓のポンプ機能が正常に働かなくなり症状をきたした状態が“心不全”です。代表的な症状は、息切れ、呼吸苦、起座呼吸(夜間の呼吸苦)、動悸、浮腫、食欲不振、体重増加などがあります。今まで平気だった坂道や階段を昇るのがきつくなったり、朝起きたときから手足のむくみが気になるようになったりしたら要注意です。
② 不整脈
一部の弁膜症は、進行と共に不整脈を合併することがあります。特に“僧帽弁”に関わる弁膜症では心房細動などの不整脈を生じることがあり、その場合には動悸や脈の乱れ、息切れなどの症状を伴うことが少なくありません。不整脈への治療、弁膜症自体への治療が検討されます。
③ 感染性心内膜炎
弁膜症の種類によっては、体内に侵入した細菌が、心臓内に住み着きやすいことが知られております。そのような弁膜症をお持ちのことがあらかじめ分かっている場合には、歯科処置やその他観血的処置をする際に、感染性心内膜炎予防の抗菌薬(抗生物質)を使用することが推奨されています。感染性心内膜炎を生じてしまい、細菌により急速に弁膜が破壊された場合には、急激に症状が悪化することもあります。
心臓弁膜症の治療
最近まで心臓弁膜症の治療は、外科手術による弁置換術(人工弁への交換術)や弁形成術が主流でしたが、ここ何年かの間に、カテーテルを用いた心臓弁膜症の治療が大きく進歩しています。
当院では、診察および心臓超音波検査などにより、心臓弁膜症の程度を把握し、その方の病状に合わせた治療が可能な高次医療機関へご紹介する方針としております。
治療法の名称 | 治療法の説明 |
対象と
なる主な 弁膜症 |
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【外科手術】 弁置換術・ 弁形成術 |
弁置換術は、壊れてしまった弁を人工弁に取り替える手術です。人工弁には生体弁と機械弁の2種類が使用されます。弁形成術は、元々の弁を残しながら、壊れている弁を“修理”する手術です。 | ほぼすべての心臓弁膜症 |
【カテーテル 手術】 経カテーテル的 大動脈弁置換術 (TAVI/TAVR) |
大動脈弁狭窄症に対して、2013年から国内で認可された治療法です。従来手術でのリスクの高い高齢者でも、開胸手術無しで手術可能となりました。 | 大動脈弁狭窄症 |
【カテーテル 手術】 経カテーテル的 僧帽弁修復術 (マイトラ クリップ MitraClip) |
僧帽弁閉鎖不全症に対して、2018年より国内で認可された治療法です。TAVIと同様にリスクの高い方にも手術が行えるようになりました。 | 僧帽弁閉鎖不全症 |
【カテーテル 手術】 経皮的僧帽弁 裂開術 (PTMC) |
僧帽弁狭窄症に対して、井上バルーンという特殊なカテーテルを使用して行う治療法です。 | 僧帽弁狭窄症 |