肥満症外来
肥満症の薬物治療外来【自由診療】
*20歳以上70歳未満で適応に合致した方のみ
肥満症治療剤 GLP-1受容体作動薬ゼップバウンド(チルゼパチド)の自由診療を開始いたします。
当院は日本循環器学会専門医が在籍しておりますが、施設基準である教育研修施設(主に大学病院など)として認定は受けておらず、肥満症治療剤GLP-1受容体作動薬ゼップバウンドを保険診療で処方することはできません。しかしながら、生活改善をしても体重減少せず合併症の併存などから肥満症の治療が必要な方々がいらっしゃることを鑑み、保険治療に則った適正使用を遵守したうえで自由診療での処方を開始することとなりました。医療保険の適応外となりますのでご了承ください。
対象患者;下記の①と②を両方満たす患者
① 高血圧、脂質異常症又は 2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断がなされ、薬物療法や生活療法等の適切な治療が行われ、かつ以下の基準を満たす患者(20歳以上70歳未満)であること。
- BMI が 35 kg/m2 以上
- BMI が 27 kg/m2 以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害(※1)を有する。
(※1)肥満症に関する健康障害
- (1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- (2)脂質異常症
- (3)高血圧
- (4)高尿酸血症・痛風
- (5)冠動脈疾患
- (6)脳梗塞
- (7)非アルコール性脂肪性肝疾患
- (8)月経異常・不妊
- (9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- (10)運動器疾患(膝や腰の障害)
- (11)肥満関連腎臓病
② 高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病並びに肥満症に対し、適切な食事療法・運動療法を 過去6ヵ月以上実施していても、十分な効果が得られない患者であること。
肥満症という疾患について

肥満状態は心血管疾患のリスク上昇要因となります。日本を含む東アジアと南アジアの112万人以上を対象とした前向きコホート研究で、体格指数(BMI)が高い肥満の人では、心血管疾患などの死亡リスクが高まる傾向があることが分かりました。心血管疾患は世界中で主な死亡原因のひとつであり、毎年1,700万人以上が心血管疾患が原因で死亡しています。(Association between body mass index and cardiovascular disease mortality in east Asians and south Asians: pooled analysis of prospective data from the Asia Cohort Consortium BMJ 2013; 347)
体格指数(BMI)と心血管疾患(CVD)による死亡との関連を調べたところ、日本を含む東アジアでは、BMIが20.0~22.4のときに死亡リスクはもっとも低くなり、やせ(BMI 15未満)や肥満(BMI 27.5以上)では死亡リスクが高くなるという「U字型」の相関が示されました。脳卒中でも同様の傾向がみられ、BMIが20.0~22.4のときに死亡リスクはもっとも低くなりました。
また、お腹の腸管の周りに貯まる内臓脂肪は、様々なホルモン(内分泌因子)を分泌することが解明されております。その中でも悪玉ホルモンといわれる(PAI-1、TNF-α、アンデオテンシノーゲン、レジスチンなど)が、脂肪や糖分の代謝の悪化を招いたり、血圧の上昇などに関与したりして、動脈硬化を進行させると考えられています。肥満を解消することで、こういったホルモンの影響も改善することができ、それによって心疾患や脳卒中のリスクを低減できると考えられます。
肥満症の薬物治療について
当院では、単なる美容や痩身目的ではなく、心血管疾患や肥満症関連疾患の減少による健康寿命の延伸や生活習慣病の改善を目的とした医療的な肥満症治療・減量治療を、GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」を用いた注射治療(自己注射)にて行っております。
ゼップバウンドはGIP/GLP-1受容体作動薬で、肥満症に対する治療薬として保険適応が認められております。しかしながら、保険診療で処方するための施設基準が厳しく、大学病院レベルの教育研修施設において循環器や糖尿病の専門医のみしか処方することができません。
また、ゼップバウンドの適応があっても、処方に至るまでには半年間の食事・運動療法や管理栄養士による指導の継続が必要で、定期的な大病院への通院が困難な方はゼップバウンドの保険による治療を受けることが難しい現状があります。
心臓血管疾患を専門とする当院では生活習慣病の改善に積極的に取り組んでおり、その一環としてゼップバウンド注射薬の適応のある方に対し、自費にて診療・処方をいたします(適応の無い方には処方いたしません)。

ゼップバウンドは、週1回の注射によって食欲を抑え、体重を減少させる効果があるとされ、従来の食事・運動療法で効果が乏しかった方に新たな選択肢を提供します。
(注;薬物治療はあくまで補助的なものであり、食事や運動などの生活習慣改善が基本であることは変わりがありません。ゼップバウンドによる薬物治療は食事療法、運動療法を頑張っても減量ができない肥満症の方を対象に、治療がきっかけとなってより減量に積極的に取り組めることを目的としております。減量に成功したら、薬物のみに頼ることなく徐々に薬を減らしていき生活習慣のみで体重を維持できるようにサポートさせて頂きます)
ゼップバウンド(GLP-1受容体作動薬)の効果について

ゼップバウンドはGIPおよびGLP-1という2つのホルモンを模倣する注射薬で、脳の食欲中枢に働くことで食後の満腹感を強め、食欲を自然に抑制します。またGIPの作用により脂肪の代謝を亢進することも分かっております。
日本国内で行われた臨床試験では、72週間の投与でゼップバウンド10mg群で約18%の体重減少(93kg→76㎏)、ゼップバウンド15mg群で約23%の体重減少(92㎏→71㎏)が報告されており、ゼップバウンドが投与された約95%の方に5%以上の減量効果がみられました。
また、肥満状態の解消に伴って心臓血管死などのリスクが改善されることも既に報告されており、肥満症の治療は健康寿命を伸ばすことに効果があると考えております。
ゼップバウンド(肥満治療)の適応となる方および適正使用について

20歳以上70歳未満で糖尿病・脂質異常症・高血圧のいずれかをお持ちの方のうち
- BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が35以上の方
- BMIが27以上であり、以下のうち2項目以上当てはまるものがある方
- 高血圧(治療中もしくは血圧130/80以上)
- 脂質異常症(治療中もしくはLDLコレステロール140以上・中性脂肪150以上)
- 糖尿病・耐糖能異常(治療中もしくはHbA1c6.2以上・空腹時血糖110以上)
- 高尿酸血症(治療中もしくは尿酸値7.0以上)
- 冠動脈疾患(心筋梗塞既往・狭心症治療中など)
- 脳梗塞
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(睡眠検査結果、あるいはCPAPの使用記録を持参)
- 運動器疾患(変形性膝関節症、変形性腰椎症など)
- 肥満関連腎臓病

上記に当てはまることを示す書類等(一年以内の健康診断結果・お薬手帳・他院の検査結果など)をご持参ください。データがない場合、初診時に測定・採血を行い、判断させていただきます。採血結果には1週間ほどお時間を要するため、当日に治療薬を処方できないこともございます。
自由診療とはなりますが、投薬の適応がない場合はゼップバウンドは処方できません。
自由診療でのゼップバウンド使用についての注意(当院での対応)
- 自由(自費)診療であっても、ゼップバウンドは肥満症への適応内使用(保険診療での治療適応に準ずる)です
- 美容での痩身目的や短期的な体重減少のみを目的とした使用、適応外使用は行っておりません
- 医師の診察を受け、効果や副作用について十分な説明を受けたうえで、治療同意書にご署名いただいた方のみ治療を開始いたします
(ご同意いただく内容)
- ① ゼップバウンドは日本国内で肥満症の治療薬として正式に承認された薬剤ですが、当院では自由診療での提供となります(保険診療での処方は行っておりません)。
- ② 副作用(悪心・嘔吐・下痢・膵炎など)の発生頻度や内容、体重減少効果には個人差があるため、確定した治療効果を保証するものではありません。
- ③ 治療の中止や用量の調整は医師の判断で行います(患者側希望での容量調節には応じられません)。
- ④ 十分な治療効果(体重減少)が得られた際には医師の判断で投与を中止(中断)することもあります。
- ⑤ 一度処方した薬剤の返品に伴う返金は行っておりませんのでご注意ください。
- ⑥ 治療中も適切な食事療法・運動療法の継続を行ってください。
- ⑦ 薬価の改定等に伴って、治療開始時に提示した料金に変更が生じる場合もありますのでご了承ください。
上記内容にご理解・ご同意のうえ、同意書に署名いただいた方のみ治療を開始いたします。
ゼップバウンド投与治療期間の目安
基本的には4か月間の継続治療を推奨しています。症状や治療効果に応じて、医師が投与量や継続期間を調整いたします。4か月治療継続しても効果がみられなかった場合は、治療終了とします(体重減少効果を必ずしも保証するものではないことにご注意ください)。
治療の流れ
- WEB予約で肥満症外来を選択し予約(基礎疾患がありBMI値その他が適応の方のみ予約可能です)
- 初回診察・検査および測定(身長・体重測定・腹囲測定・必要時採血)で適応を確認(上記参照)
- 1年以内の採血結果(他院検査・健診結果等)をお持ちの方は持参頂ければ採血は省略可能です
- ゼップバウンドの効能効果および副作用の説明、治療同意書の取得
- 初期投与量(2.5mg)から治療開始(院内で注射剤の処方、初回は注射手技のレクチャー)
- 月1回の診察で経過観察(体重および腹囲測定)と副作用チェック(目安:4週目・8週目・12週目・16週目に再診)
- 減量効果と副作用に応じて、段階的にゼップバウンドの増量もしくは減量を検討
- 目標体重に達した場合は、ゼップバウンド維持量での治療継続もしくは投薬終了の判断
ゼップバウンドの主な副作用
主な副作用は、以下になります。
比較的頻度が高いもの
- 消化器症状(食欲減退、吐き気、下痢、便秘、消化不良、腹部不快感など)
- 注射部位の疼痛、頭痛、関節痛
頻度は低いが報告されているもの
- 急性膵炎、胆嚢炎、胆管炎
- 低血糖症、血圧低下

ゼップバウンド注射治療の治療スケジュールと費用
患者さんの状態に応じた投与量を週に一回投与します。
2.5mgから開始し副作用や効果をみたうえで、2.5mgずつ増量し10mgを維持量とします。
(少ない量で効果があった場合は、その用量で維持することもあります)

一回投与量(週1回) | 本数(月4回分) | 月額費用(税込) | 備考 |
---|---|---|---|
2.5mg | 4本 | 26,400円 (1本6,600円) | 初期開始量 |
5.0mg | 4本 | 39,600円 (1本9,900円) | 医師判断で増量 |
7.5mg | 4本 | 52,800円 (1本13,200円) | 医師判断で増量 |
10.0mg | 4本 | 61,600円 (1本15,400円) | 当院の最大量(維持量) |
*薬剤料金とは別に、診察、血液検査、尿検査にかかる費用として、以下の料金がかかります。
初回診察料 | 5,500円 (税込) | *土日は+1,000ご負担頂きます |
---|---|---|
適応外と判断した場合の診察料 | 2,200円 (税込) | 身体計測その他で適応外と判断された場合 |
初回採血料 | 5,500円 (税込) | 当院での検査が必要なかた |
経過観察目的の採血料 | 4,500円 (税込) | 投与開始4週目および必要時に行います |
例)初回診察で採血検査もおこなった場合(平日);5,500+5,500=11,000円→1週間後以降に結果判定し適応があった場合は薬剤の処方;26,400円 計37,400円(初期投与量;4週間分)
- *価格は全て税込みです
- *自由診療のため、健康保険はご利用いただけません
- *薬価の改定などにより、今後価格が変更となる場合があります
- *一度処方した薬剤の返品・返金は致しかねますのでご了承ください
ゼップバウンドの使用(投与)方法・注意事項

- 注射は週1回、ご自身での自己注射(皮下注射)となります(初回に当院で注射方法などを指導いたします)
(自己注射がご不安な方は診療時間内であれば当院での接種も可能です) - 毎週同じ曜日に投与してください
- 薬剤は冷蔵庫(2~8℃)で保管してください
- 使用済みの注射剤は当院へお持ち頂ければ医療廃棄物として廃棄させて頂きます
ゼップバウンド投与における注意事項
- 本剤投与中も適切な食事療法・運動療法を継続し、生活習慣の改善に努めてください。
- 本剤投与開始後、本剤を4ヵ月間投与しても改善傾向が認められない場合には、本剤の投与中止を検討します。
- 1ヵ月以内に妊娠を予定する女性では本剤の投与を中止してください。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方、1型糖尿病の方、作用の重複する薬剤(一部の糖尿病治療薬)を使用中の場合は投与できません。
- 妊婦又は妊娠している可能性のある方、授乳中の方、未成年、高齢者は投与対象外となります。
よくあるご質問(Q&A)
- ゼップバウンドは保険診療で処方できますか?
- GLP-1受容体作動薬の肥満症治療への保険診療の適用には厳しい条件があります。基礎疾患のある肥満の方のなかで、教育研修施設(大学病院等)において半年以上の食事療法を受けて効果が不十分だった方のみに限られます。当院での治療は自由診療(自費)となりますが、生活習慣病の改善や健康寿命の延伸を目指し、治療適応のある方にはより積極的に肥満症治療をお受けいただきたいと考えております。
- 副作用はありますか?
- 一般的な副作用として、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が見られることがあります。通常、これらの副作用は治療開始後数週間で軽減していくことが多いため、治療開始は最小容量からの投与となります。細かな副作用については診察時に詳しくご説明いたします。
- どのくらいの期間で効果が出ますか?
- 個人差はありますが、多くの方は治療開始後4〜8週間程度で体重減少が実感できるようになったと報告されております。臨床試験では72週間の投与で平均して体重の約18%の減量が報告されています(SURMOUNT-J試験)。
- 治療期間はどのくらいですか?
- 通常、目標とする体重減少が達成されるまで継続します。その後、体重維持のために投与を継続する場合もあります。個人の状態や目標により異なるため、医師と相談しながら決定していきます。
- 注射は痛いですか?難しいですか?
- ゼップバウンドは細い針を使用した一回使い切りの皮下注射剤です。注射の際の痛みはゼロではありませんが、痛みが少ない工夫はされております。また。あらかじめ針がセットされた専用ペン「アテオス」を採用しており、3ステップの簡単操作で投与可能です。初回は医師・看護師が丁寧に注射方法をお教えしますので、ご安心ください。ご自身での投与が不安な方は来院して頂ければ看護師による投与も可能です。